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週刊 BIG COMIC スピリッツ

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2013/02/18 Tomohiro Kumagai

□ 美味しんぼ 福島の真実編 3 を読んで

―    福島の苦しみの本質    ―

―    東電福島第一原発から放出され続ける放射能    ―

―    放射能汚染による福島の土壌、海の破壊    ―

 

復興が進まない福島の姿を前に、どうにもならない大きな壁が立ちはだかる。

「地震や津波の被害は一過性だが、放射性物質で破壊され、汚染された国土は、簡単には元に戻らない。」

生きる場所を破壊され、人間の力ではどうすることも出来ない苦しみ。それを前に苦悩する人々の様子が描かれる今回のお話は、読み返すたびに、答えの出せないいろいろな問を考えさせてくれます。

 

描かれる 2011 年 11 月の状況

震災発生以降、復興に向けて準備をしっかり整えるも、2011 年 9 月に漁を再開する目標も、事前の調査でヒラメから数千ベクレルの放射能汚染が確認され、あえなく断念。

大賑わいだった港も、放射能被害によって、2011 年 11 月の今では、すっかり何もなくなってしまったそうです。

 

いわきの海も、土壌の放射能汚染が深刻で、2011 年の 10 月半ばには 3000 ベクレルもの土壌汚染が確認されたのだとか。

ウニもアワビも、海藻を食べるので、そこからセシウムを体内に取り込んでしまう。しかもそれが抜けるまでには何年もかかるそうです。この状況、どうやって打開しろというのだろう。

 

あれから 2 年足らずの今、あとどれくらいで放射能を気にせず暮らせる世の中が訪れるなんて、どこまで判っているのでしょうか。

「風評被害」や「食べて応援」、「収束宣言」という言葉にかき消され、このような福島の現状は当時の 2011 年 11 月も然ることながら今になってもまったくと言っていいほど耳に届いてこない。

ここ神奈川県くらいまでくると、もうほとんどの人が放射能のことなど忘れているかのようにも錯覚します。

 

今回の物語で語られている 2011 年 11 月。

そして今は 2013 年 2 月 15 日。まだ 1 年と数か月が経過した今の福島は、どの程度まで復興に向けて進んでいるんだろう。それともまだ苦しみの本質から抜け出せずにもがき苦しんでいるのか。

そこが、まったく見えない、まったく何も聞こえない。

それこそが、神奈川という値域に住む自分としては、とても重大な問題のようにも感じます。

 

そしてそれより遙かに深刻なはずなのが、描かれていた福島の現地。

もはや放射能が検出されたかどうかで決まる問題ではない気がします。とにもかくにも、まずは東電福島第一原発の放射能が事故前のように完全に遮蔽されて初めて、そして数年以上の月日の経過を以て初めて、次の課題に迎えるような気がしてなりません。

 

美味しんぼに対するネットの評判

インターネットで、美味しんぼ福島編に対する評判というものがふと入ってきました。

今(2013 年 2 月)ごろにもなって、まだガイガーカウンターで計測した数値を見てパニックしてるなんてどうかしてるとか、放射能と放射性物質との区別が何も出来てないとか、著者のレベルを疑う評判でした。

 

自分もガイガーカウンターを手にして計測してみた 2011 年 11 月、ちょうどこの物語が語られている時期と重なるころでしたけど、当時の自分もこんな風に、これって大丈夫なのかと心配になったものでした。

それからずいぶん経った今、MKS-05 による計測値はほとんどの場合で 0.10 μSv/h を下回るようになり、慣れもあってか数字を見ても心がほとんど動くことはなくなりました。

それでも、それに向ける本質は当時と変わっていない気がします。

 

あれから時は経った、けれど、あれから何が変わっただろう。

少なくとも、放射線の測定値を見ても安心だと判るようになるほどの進歩は、自分には芽生えていない気がします。

 

原発が爆発した 2011 年 3 月の当時。

テレビからは

  • 「直ちに影響はない」
  • 「放射能は漏れていないから大丈夫」
  • 「原発は五重の壁で守られているから大丈夫」
  • 「建屋は壊れたが、原子炉格納容器があるから大丈夫」
  • 「ほんとうに怖いのは内部被ばくだ、線量は出ているが大丈夫」
  • 「原子炉格納容器が最後の砦」

そんな話をずっと聞かされていました。

 

それが、実態が明るみに出るにつれて、次第にそれが語られなくなって行く。

そして今に至っては、公で、これらの言葉を聞くことは滅多になくなりました。

今では、放射能は身近にあって、数ベクレル程度なら食べ物を通して取り込む可能性は当然のことになりました。

 

  • 事故前から寸分も漏れないようにと厳重に封じられてきたもの
  • 原発敷地内で厳重に監視されてきたもの
  • 危険性が定かではないが、安全性も定かではないもの
  • 浴びる線量が増えるほど、危険性が直線的に増えると仮定されているもの

 

今は「基準値」という言葉で、それ以下なら安全、安全とまで言っているのかよく判らないのですけど、それ以下なら出荷していいという考え方が主流になっています。

確かに、既に放射能が漏れてしまった今、考え方をそのようにシフトすることは正しい事のひとつでしょう。

しかしそれで何が変わったのか、上記のようなこれまで聞いてきたようなことが安全ということになったのか、時間ばかりは経ったものの、それで何が変わったのかは自分にはまだよく見えません。

 

ニュースなどから情報がほとんど発信されなくなった今、漫画であれ個の考え方であれ、こういう大衆へ向けて発信される情報というのは、自分にとっては価値のあるものに感じます。

これからどんな物語が展開されて行くのか、著者がどんなことを伝えようとしているのか、それはまだ何も見えてはこないですけど、これからの考え方のひとつの足しになるのかと思うと、続きがとても楽しみです。

 

□ 美味しんぼ「福島の真実」編 #3

著者 雁屋哲
掲載紙 週刊 BIG COMIC スピリッツ

 

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