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週刊 BIG COMIC スピリッツ

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2013/03/12 Tomohiro Kumagai

□ 美味しんぼ 福島の真実編 4 を読んで

原作者の願い

インターネットの Yahoo! ニュースから、美味しんぼの著者、雁屋哲さんの想いの欠片が流れてきました。

「ぼくがこの目で見た真実だけを漫画で読者に突きつけ、それからあとは、読んだ人に考えていただきたい。」そう願っていると綴られていたその話題を読んで、たしかにそれが、今は大事なことのように思えます。

 

むしろ、あれから 2 年が経った今でも、世の中はまだそんなところに居るとも言えて。

2011 年 3 月 11 日の東日本大震災から 2 年という節目を迎え、テレビやインターネットなどからも少しずつ、事故の様子や実害の片鱗が窺えるようにも感じなくもない今日この頃。

これからもこのまま、願わくば勢いづいて、原発事故についてもっとオープンに語られるようになってくれればいいのですけれどね。

 

テーマは食の安全

今回の美味しんぼでは、福島の食の話題がようやく満足に描かれましたね。

そしてこの「美味しそうに食べる食卓」が本当に訪れるのは、なんだかまだ遠い道のりの先のようにも感じてしまいます。地域の話ではなく、放射能を何も気にしなくていいという意味でです。

 

食の安全について見たとき、放射能が気になる人にとっては食品が放射能的に安全かどうかが主な関心どころ。

放射能は基本的に害があるとされ、ゼロから比例して量に応じて危険度が増すとも言われていて、それを厳重に封じ込めて安全性を誇示していた原子力発電所が、2011 年 3 月に福島で爆発事故を起こした、というのがまず事実として背景にあります。

爆発事故で放射能が漏洩したという事態を受けて、それがこの 2 年のうちにどこまで払拭できたのか、そしてどこまでを事実として受け止められたのか、そのどちらにも未だに疑問が根強く残っています。

 

原発事故からこれまで幾度と「風評被害」という言葉を耳にしてきましたけど、前後に現れる言葉は決まって「安全なのに」とか「おいしいのに」とか「気にする方がおかしい」とか「見てきたから」とか「行って大丈夫だったから」とか、なんだかそんな言葉ばかりです。

このような言葉をいくら並べたところで、「それなら気にしなくていいかな」って気が変わる人なんてどれだけいるものなのでしょう。

 

それはもしかしたら、警戒心から過剰に防衛しているのかもしれません。

それでも事実から目を背けたままでは、さすがに放射能問題については、本当の風評被害が払拭される日は永遠に訪れないようにも思えてしまいます。

 

2 年が経っても払拭されない「危険性」というテーマ

事故が起こって「炉心溶融は起こっていない」とされていた頃には、テレビでも試練に臨む自衛隊や消防隊の勇士が報道されたり、NHK 科学文化部などが原子炉の状況を、解説してくれたりしていたものでした。

それが、炉心溶融が実際に起こっていたことが東京電力によって発表されると、どうしたことかそれから先の解説をまったく見なくなった気がします。

あれだけ、炉心溶融が起こるかどうかが大きな分かれ目かのように言っていたにも関わらず。

 

当時の状況を振り返って語る番組は時折見られますけど、それもなんだか「過去のレポート」止まりで、長きに渡って続くはずの原子力災害についての羅針盤としてはどうも力不足に思えます。

 

それでも、一部では「高すぎる」という声もあるものの、放射能の規制値も整って、食品に対するヨウ素とセシウムについての様子に限れば、それなりに様子も伺えるようになってきました。

そして今回の美味しんぼから、その中で懸命に努力しときに阻まれながらも、安全なものを提供している方々の姿が見れたのはとても貴重に思えます。

しかし、そこからどうやって「食を笑顔に」結びつけるか、そこがまだ見えないところです。

  • 放射能は、漏れたら危ないんじゃなかったのか。
  • 原子炉格納容器が最後の砦じゃなかったのか。
  • 怖いのは内部被爆、じゃなかったのか。
  • 検査はいつもヨウ素とセシウムだけだが、プルトニウムやストロンチウムこそ危ないんじゃなかったのか。
  • プルトニウムは飛ばないから心配ないという話を耳にしたことがあったが、東京でプルトニウムが見つかったという報道に対して、なぜ何も説明が入らないのか。
  • 事故直後は「直ちに影響ない」と言って、後になって「(当時)安全とは言っていない」と言われても、間違ったことは言っていないがカッコよくない。(こういう感性的なものも重要)
  • そもそも本当に、基準値は十分に安全を見た値なのか。
  • そもそも放射能って、少なくとも 5 年 10 年、それ以上の長い年月をかけて向き合うような災害ではなかったのか。

些細なことも含めればまだまだ沢山ありますけど、放射能について見聞きする度、そんなことが必ず頭を過ります。

だから、ヨウ素とセシウムだけの検査結果を提示されても、「おいしいよ」とか「安心・安全」とかそういう言葉をいくら並べられても、なかなか素直に気持ちがそこまでたどり着いてくれません。

 

そんな、頭の中に描かれる「問題意識」は、人それぞれで大きく違うことでしょう。

でも、それぞれが描くそんな意識にも、納得が行く、納得が行かなくても筋の通った知識があったなら、少しずつでも食を楽しむ意識に繋がって行けていると思うんですよね。すなわち「風評被害」の払拭です。

この 2 年という年月があれば、少しずつでもそれが積み重なれば結構な効果が現れていたんじゃないかと思うのですけど、少しも前進している気がしない今がとても残念に思えてなりません。

 

専門家は今、何をしているのでしょう

ところで、本当にプルトニウムとストロンチウムは、今はどうなっているんでしょうね。

放射能と言えばヨウ素とセシウムになってしまって、その他の放射性物質についてはほとんど耳にすることがありません。

でも、内部被爆の観点で見たとき、アルファ線を出すプルトニウムは極微量でも身体にかなりのダメージを与える可能性がある、と聞いたことがあります。そしてそれが東京でも検出されているという現実。

 

原子力の専門家は、こんな事態にいったい何をしているのでしょう。

風評被害を打破したいなら、ただの「安心・安全」という言葉ではなくて、そういうところに注力して欲しいものです。もちろん風評被害が打破された後には、実害も残ることを忘れてもらっては困りますけど。

これだけの原発事故なのに、実害の話が今までほとんどされないことが、原発に対する何より大きな不信感を抱かせているような気がしてなりません。

 

□ 美味しんぼ「福島の真実」編 #4

著者 雁屋哲
掲載紙 週刊 BIG COMIC スピリッツ

 

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