放射能の計測値と計測単位 - 放射能の影響について調べてみる

LIFE REPORT


放射能の計測値と計測単位

平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災(2011 年東北地方太平洋沖地震)により発生した "東京電力福島第一原子力発電所事故" 以降、各地の放射能の計測値が日常のようにニュースで耳にするようになりました。

計測値については 原子力発電所のモニタリングポスト計測値について で触れたように各方から情報提供されていますけど、放射線量が身近ではなかったこともあって、報道された当初は聞いても何も分らないところがありました。そこで、少しでも、発表された数値が何かの尺度になればと思い、その意味合いについて調べてみることにしました。

 

単位の接頭辞について

報道されている放射線の数値について、日常ではあまりなじみのない "μ" や "n" といった接頭辞が単位に付けられています。

これらの単位の大きさは、次のような関係になっています。

  • "n"(ナノ)を 1,000 倍すると "μ"(マイクロ)
  • "μ"(マイクロ)を 1,000 倍しると "m"(ミリ)
  • "m"(ミリ)を 1,000 倍すると単位の接頭辞なし

 

線量当量 Sv(シーベルト)

まず、テレビの報道で初めて聞いた単位が "μSv/h" (マイクロシーベルト/毎時)でした。

このうちの μSv は "線量当量" といって、人が放射線を受けた時の影響の程度を表す単位なのだそうでした。基本単位は "シーベルト" (Sv) で、その量に応じて次のように単位記号が付与されます。

1 Sv(シーベルト)

= 1,000 mSv(千 ミリシーベルト)

= 1,000,000 μSv(百万 マイクロシーベルト)

= 1,000,000,000 nSv(十億 ナノシーベルト)

これに "/h" がついているので、その放射線濃度が変わらない状態であれば、そこに 1 時間いると、その線量当量を浴びるということになります。

 

そしてこの線量当量に応じて、健康上の影響が出るかどうかといった指標が設定されている様子です。指標については 放射線の量を分かりやすく解説した図 - 写真共有サイト「フォト蔵」 の方に見やすいと思う資料がありましたが、これを踏まえて指標を表に整理すると次のような感じでしょうか。

10,000 mSv
7,000 mSv
10 Sv
7 Sv
全身被曝(死亡)
1,000 mSv 1 Sv 全身被曝(悪心, 嘔吐)
500 mSv 0.5 Sv 全身被曝(末梢血中のリンパ球の減少)
200 mSv 0.2 Sv 全身被曝
これ以下では臨床症状が確認されていない
10 mSv 10,000 μSv ブラジル・ガラバリでの年間で受ける自然放射線量
6.9 mSv 6,900 μSv 胸部 X 線コンピューター 1 回分
断層撮影検査(CT スキャン) 1 回分
2.4 mSv 2,400 μSv 年間で受ける自然放射線量の世界平均
1.0 mSv 1,000 μSv 一般の年間の線量限度(基準値)
0.6 mSv 600 μSv 胃の X 線集団検診 1 回分
0.19 mSv 190 μSv 東京・ニューヨーク航空機旅行で受ける放射線量
0.005 mSv 5 μSv 胸部 X 線集団検診 1 回分
原子力発電所周辺の年間線量目標値(基準値)

なお、この表は一度にこれだけの放射線を被曝した場合のお話で、時間をかけてこの線量当量を浴びた場合には、人間の回復能力もあるため、より影響が小さくなるものとされる話も見られました。

 

吸収線量 Gy(グレイ)

モニタリングポストの計測値が 日本原子力技術協会 の "原子力施設情報 公開ライブラリー" からリアルタイムで閲覧できるようになっているのを知って、早速それを眺めてみたところ、計測値には "nGy"(ナノグレイ)という単位が使用されていました。

テレビでは "mSv"(ミリシーベルト)という単位でモニタリングポスト計測値が発表されていたので戸惑いましたけど、どうやらこの "Gy"(グレイ)という単位は、放射線が物質に照射されたときの放射線のエネルギーが物質にどれだけ吸収されたかを表す単位なのだそうです。

これを "Sv" に変換することができるようで、そのためには放射線の種類によって異なる "放射線荷重係数" を "Gy" の値に乗算することで求めることができるようでした。

 

ウィキペディアの シーベルト - Wikipedia のページによると、放射線荷重係数は次のようになるようでした。

α 線(アルファ) 20
β 線(ベータ) 1
γ 線(ガンマ) 1

他にもいろいろと掲載されていましたが、とりあえず、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生後によく耳にするものについて挙げてみると、このような感じになりました。なお、アルファ線, ベータ線, ガンマ線のそれぞれについての詳細は、ウィキペディアのそれぞれ アルファ粒子 - Wikipedia, ベータ粒子 - Wikipedia, ガンマ線 - Wikipedia に掲載されています。

その中でガンマ線の特徴として、ガンマ線の持つ電離作用により DNA を傷つけることによる発癌作用があり、致死量は 6 Gy 前後と記されていました。

 

また、日本原燃 JNFL環境モニタリング 解説 のページにも、モニタリングポスト計測値の nGy(ナノグレイ)についての説明がありました。

これによるとモニタリングポスト計測値は、一般的な環境条件の場合には、次の計算式で計算することができると記されていました。

1 Gy/h = 0.8 Sv/h

各地原子力発電所のモニタリングポスト計測値は nGy(ナノグレイ)ですが、この場合も同様に "1 nGy/h = 1 nSv/h" として計算することが可能です。

ウィキペディアの情報を見ると、放射線の種類によって乗算する放射線荷重係数が大きく異なるような感じですけど、日本原燃の情報に依れば、環境条件により異なるが通常は 0.8 を放射線荷重係数とすれば、モニタリングポスト計測値を "Gy" から "Sv" に変換することができるような感じで記されていました。

詳細なところは分りませんけど、とりあえず、モニタリングポスト計測値に対しては、日本原燃のサイトにあった 0.8 を乗算するという形で考えていってみたいと思います。

 

放射能の量 Bq(ベクレル)

農作物や水などへの放射線の影響として "ベクレル" という単位が報道で使われるようになりました。

これは、1 秒間にいくつの原子核が崩壊して放射線を放つかというのを表す単位で、例えば 100 Bq(ベクレル)であれば、1 秒間にその放射性物質 100 個が放射線を発するということになるようです。なお、放射線の強さは放射能物質の種類や距離・遮蔽物によって異なるため、異なる放射性物質を Bq(ベクレル)だけで比較することはできないようです。

そのため、示されたベクレルの値がどの程度人体に影響するかを比較をしたい場合には、放射性物質の種類によってそれが生体に与える影響の度合いを考慮した "放射線荷重係数(線質係数)" を乗算して、"線量当量" (Sv/s) に変換する必要があります。

 

そこで、放射性物質の種類による "放射線荷重係数" を調べてみようと思ったのですけど、今のところ公が発表する資料にたどり着くことができませんでした。

公式な文書と思われる画像は見つかるのですけど、その画像の公開元が信頼のおける情報源なのかが分らなかったので、もう少し調べて具体的なことが分ってから、まとめてみたいと思います。

なお、見つかった放射性物質の種類による放射線荷重係数の一覧表は "日本の環境放射能と放射線" や "ICRP (国際放射線防護委員会) Publications" から発表されているような情報も伺えましたけど、具体的な情報は今のところ見つかっていない感じです。