ガイガーカウンターを購入してみる

HARDWARE REPORT


ガイガーカウンター購入の経緯

平成 23 年 3 月 11 日の東日本大震災以降、その影響で爆発事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所の放射能の影響が、8 か月経ってもなお、日本中に不安を残し続けているように思います。

その影響は福島県のみならず、栃木県の那須塩原市、群馬県の前橋市、千葉県の柏市など、いわゆるホットスポットという形で広く及んでいるという実態も見えてきました。

 

自分の身近の神奈川県横浜市についても、港北区で高い放射線量が計測されたところもあって、身近なところに高い汚染箇所がないかが気になっているところでした。同じ場所でも土の地面や雨どいの下などで汚染度が高くなる傾向があるという話も聞きますしね。

行政もようやく放射線測定を行って公表してくれるようになってはきましたけど、それを見ても、自分の近くはどうなのかというところはやっぱり気になります。

そんな不安を拭うためには、放射線測定器を使って実際に計ってみることくらいしかないのでしょう。

 

放射線を計る装置と言えば、放射線測定器、いわゆるガイガーカウンターですけど、値段の高さや信頼性の不透明性などからなかなか買えずに過ごしてきたのですけど、ようやく考えが定まってきたので、思い切って購入してみることにしました。

 

購入する放射線測定器を選ぶ

最終的には Sparing-Vist Center 社の を選びましたけど、購入にあたっては、次の 3 つのどれにするかで最後までかなり迷いました。


GM 管によるガイガーカウンターです。高価ですけど高機能で、GM 管としては信頼性は高めらしいです。低線量は苦手なのかもしれません。

小型のシンチレーターです。シンチレーターとしては手頃な価格で、低線量でもそれなりに安定した計測ができるらしいですが、ノイズの影響を受けることもあるそうです。

安価なガイガーカウンターです。マイナーバージョンアップを重ねて計測値も安定してきたらしく、とりあえず近所の放射線量の高低を知りたい場合に導入しやすい気がします。

放射線測定器には、よく耳にする GM 管方式のガイガーカウンターの他にも、シンチレーション方式のシンチレーターや、半導体方式の放射線測定器など、いくつか種類があるようでした。

一般に、シンチレーターは低線量も高精度で計測できるらしいのですけど、高価になってくるそうです。ガイガーカウンターはどうしても計測精度は低くなるものの、価格は比較的安くなるようです。半導体方式のものは、小型にできるのがメリットですが、それゆえに計測値が安定するのに時間がかかってしまうらしいです。

購入候補を絞り込む

とりあえず、インターネットで放射線測定器を探してみると、けっこうたくさんの機種や体験談が出てきます。

そこからいろんな機種を見てみたのですけど、広く使われている感じがするのは、やはりなかなか高価なものですね。さすがに 10 万円〜20 万円もする機種はなかなか手が出ないところです。

 

日本製のシンチレーター などもなかなか良さそうでしたけど、13 万円くらいの価格に手を出そうとまでは至りませんでした。

値段が高いというのの他にも、ガンマ線だけしか計測できないというのも、購入まで至らなかった理由なのかもしれません。

ただ、ベータ線を計測できる機器については、話題になっているセシウムでは、ベータ線と併せてガンマ線も出していることや、ベータ線が影響する範囲は小さく、正確な計測も難しいことから、ガンマ線を計るだけでも汚染状況を調べるには十分というような意見も見られました。

それなら、ベータ線計測にこだわる必要もないかなとも思いつつ、でもせっかくだからベータ線の計測というのがどんなものか試してみたい気もしつつ。

 

そうしていろいろ迷いながらも  を候補から外すと、最後までずっと気になった  が主力候補に挙がってきました。

インターネットで調べてみると、計測値の信頼性もなかなか評判良い感じで、画面も広く、計測誤差の目安も表示してくれます。計測できる放射線は、その場の空間線量の他にも、累積線量も並行して計ることができる感じです。

単四乾電池 2 本で 1,500 時間も計測できる点や、閾値を自由に設定できて、それを超えると警告音で通知してくれるなど、充実した機能も魅力的でした。

値段面での観点から

この  の迷いどころとしては、値段が 9 万円と高いところでしょうか。

この計測器の廉価版で 5 万円程度の  という機種もありましたけど、測定誤差が少し大きくなることと、黄色い筐体があまり好きになれないところです。

もう一つ、同一の機種名で旧型の  もありました。こちらは 6 万円程度で計測精度は新型の  と同等とのことで少し魅力もありましたけど、この値段差なら、せっかくなら広い画面により多くの情報が表示される方が良い気もします。

それなりの値段差なので、かなり迷いましたけど、自分としてはやはり新型に軍配が上がるのでした。

 

これよりも安いものとしては、 と  が目に留まりました。

 の方は、シンチレーターの中では随分安い機種になるようで、シンチレーターながらの計測精度の高さが売りなものの、計測値が安定するのに時間がかかることや、外的ノイズの影響で誤差が入る可能性もあるらしいのがネックなところです。

値段で見れば、 が良さそうな中では最も安くて、現時点では 2 万円で買える程度になっていました。バージョン "1.CL" では計測精度もだいぶ良くなってきているとのことなので、とりあえず計って様子を知りたい場合に、良い選択肢かもしれません。

 

そんな感じで検討して、値段と性能面を考えると、候補は  と  とに絞られてきました。

計測精度の観点から

候補が  と  とに定まって来ると、気になるのが計測値の範囲です。

 は 0.03 〜 1,000 μSv なのに対して、 の方は 0.10 〜 9,999 μSv までとなっています。前者は計測精度は低めながらも 0.03 から計れて、後者は計測精度は高めながらも 0.10 からしか測れないといった感じの様子です。

 

とりあえず、試しに東電福島原発事故が発生する前の安全基準である年間 1mSv を純粋に時間あたりに直してみると、1 mSv を 365 日で割って、さらに 24 で割ってみて、単純計算でおよそ 0.114 μSv という計算になるようでした。

すなわち 0.114 μSv 以上の場所に 1 年間居続けたとすると、昔の安全基準の、年間 1 mSv を超える感じになるようです。

 

そこから考えれば、 の仕様上の最低値が 0.10 μSv であったとして、計測誤差 15% を加味したとしても、とりあえず計測値が 0.10 を示すのであれば、原発事故という状況に於いて、ひとまずは安心と見れるような気がします。

神奈川県横浜市ほどの距離であれば、きっと 0.10 μSv 辺りがひとつの基準になるでしょうし、精度の低めな計測器でたとえ 0.03 を計ったところでそれがどの程度の確からしさか判らなければ、それほどの意味がなさそうな感じもします。

ベータ線計測の観点から

また、ベータ線の計測についても、少し気になる情報が出てきました。

ベータ線は正確な計測が難しいことと、ガンマ線の計測だけで十分な指標になるという話もあったので、今回もそこまで重視はしなかったのですけど、候補に残った  と  は、どちらともベータ線を計る機能が備わっていました。

それならどちらでもいいかなと思うところでしたけど、少し調べを進めてみると、 を使用している人のレポートの中に、ベータ線の影響を避けるために、アルミホイルで本体を巻いて計測しているとのことです。

 

ベータ線も計測できる機械だと、ベータ線とガンマ線の両方を計測してしまい、大きめの計測値が出てしまうこともあるのだそうです。

その点も  では考慮されているようで、本体裏面の蓋に鉛版か何かが貼られていて、それを取り付けている状態では、ベータ線を遮断して計測してくれるようになっているそうです。

ただでさえ計測精度が低めの機種で、どの程度上手く出来たかも判らない自作のアルミホイルケースで包んで、0.03 などの低線量を詳しく調べてみたところで、それにどれくらいの価値があるのか、今の自分には判断できないところです。

 

以上のような感じから、とりあえず今回は  の新バージョンを購入してみることにしました。

 

TERRA MKS-05 で空間線量を計測してみる

とりあえず  を購入して、計測してみた感じとしては、平成 23 年 11 月 14 日現在の横浜市青葉区内で、家の中でも外でもだいたい 0.11 から 0.13 μSv を記録するような感じでした。

雨どいの下では特に変わらず、庭にかき集めた枯葉の上だとせいぜい 0.14 μSv くらいに上がる感じです。

 

これは計測器の仕様上の下限と計測誤差によるものなのか、それとも横浜市青葉区内が 0.12 μSv くらいの空間線量になっているのか、想像していたよりも絶妙で、今のところは何とも言えないところです。

これについてはもう少し実際の計測を重ねてみながら、発見があればまた改めて記して行きたいと思います。